―フランスが連載された経緯について教えてください
フランスの連載の前に「タオル」ってのがあって、その後に「風邪ひき野郎」があって反応が良かったらしく、ヤンマガの方からなんかやってみないかって話がきてはじめたのがフランスなんです。

―振り返ってみて、いかがですか?
絵が恥ずかしいね。今でも絵に関しては1ヶ月前に描いたものは下手に感じるくらいだから。6、7年前の絵となると・・・。

─ストーリー的にはどうですか?
恥ずかしいよ。やっぱり当時の時事ネタなんか入っていたりして。全部替えたいくらいだけど、むしろ当時の世相なんかわかっていいのかな(笑)。正直言って今ならやらないなっていうところはあるけど、あれはあれでいいのかなと。読み返してみて少し感心するところもあったしね。

─初心を思い出す?
初心というか、当時のマンガに対する姿勢みたいな感じだね。コイツ何も考えてないなんだな〜っていう(苦笑)。作品が全部、頭の中なんだな。当時は社会人とは言えないような状態で行動範囲も狭かったし、見るものが少なかったから、やっぱり見てきたものの中でしか描けなかった。それを組み合わせると、あんな感じになるのかな。

―思い残したことは?

正直、キャラをもっとちゃんとしておいた方が良かったのかな、と思ったね。「良平」しゃべり過ぎか?と思うところもあったし。今だったらストーリーを展開する為に話す役は「みかん」がやれば良かったかなと。寡黙なヤツはしゃべっちゃダメなんだ(笑)。何も考えないで描き始めちゃったから、結局自分の切り売りと言うか、自分の中のはしゃぎたい部分は「ピンチ」で、せつない部分は良平でっていう風に自分の性格の中であてはまる部分をそいつら(キャラ)に当てはめていった感じでしょうね。全部合わせて当時の心境みたいな。読者にしてみたら「テメーの日記かよっ!」ていう(笑)。

―でも、描きたいことが描けたのでは?

フランスは編集サイドは「タオル」の延長だから、もっとタオルの試合をいっぱい描いて欲しかったんだと思う。スポ根ものって言うか、良平が敵をバンバン倒して行って「もっと強い敵はいねーのか?」っていう。

―王道ですね(笑)
なんだろーな、自分は自分で必死だったから出せるものを全部描きたくなっちゃって。今ほど仕事だと思っていなかったんだろうな。芸術家だと勘違いしている部分があったのかもね。読者のニーズ、編集部のニーズまでは頭がいってなくて、自分が才能があるからここにいると思い込んでた。若さ故に自分のニーズしか満たしていなかったんだね。それでも「良かった」って言ってくれるほんのひとカケラの人達がファンになってくれているんだと思うけど、あの時もうちょっとね、先々を見ていれば今はこういう感じではなかったかもしれない。別に後悔している訳じゃなくてこれはこれで良かったんだけど。とにかく当時はまだプロ意識は全然なかったけど、テンションだけはやたら高かったっていう(笑)。失うものはなかったから。

─逆に、当時持っていたものは全て出しきれた?
出し過ぎちゃったんじゃないかなと思うくらいで、やりたい事全部入れたらぐちゃぐちゃになっちゃったみたいな(笑)。いまだにその傾向はあるのかもしれないけど、笑わせるんだかせつないんだか、どっちかはっきりしろよって。読んでて読者は安心しないんだろうね。不安と言うか、バランスが不安定な感じで。

―そこが魅力になっているのでは?
描いてる本人の心境というか、十代終わり頃ってそういう不安定な時期じゃない?そういうのを出したかったっていうのもあるんだけどね。そこは今もそうで、描きたい部分でもある。表裏一体なものじゃないですか?はしゃげばはしゃいだ分、後が虚しいという。それを表現したかったというか、自分がそうだったような(笑)。飲んだり、走りまわっていたりね。

─現在までの各作品においても一貫されている持ち味ですね
そうだね、東京カイシャインだけはちょっと違うけど。敢えてあれはそういうふうにしてみたかった。まだ特に作風を固める時期でもないと思っているんで、色々やってみようというのは常にあります。

─気が早いかもしれませんが、下巻について
う〜ん、新しく書き下ろす2話分に関してはやっぱり絵は変わっちゃうでしょう。一話目と十話目が全然違うようにね。ちょっと思い出してちゃんと描こうと思うけど、あんな不安定な線は出ないと思うな。わざと手を震わす訳にもいかないからね(笑)。

─そういうところも見所のひとつになりますね。
オレが心配してるのはどう考えてもピンチの頭はデカ過ぎるんだよね(笑)。コマによって違うんだけどさ。今の自分の美的センスからしてもやっぱりデカ過ぎる。でも当時を尊重しなくちゃいけないから、今の自分の美的センスに合わせるわけにもいかないじゃない?だから、頭はデカ過ぎるくらい、手足は細すぎるくらいでしょうがないのかな。そういう人間だからしょうがないと思って描きますよ(笑)。またあの時みたいに、描いてて涙こぼれる事を期待してます。上巻に関しては出来あがってるものだから、死角なしだよね。

─なるほど、死角なしですね
わかんないけど、そう言っておかないと(笑)。良いテンポで描いてたと思うんだ、急ぎもぜず、遅すぎもせず。ローなテンポだから、継ぎ足し継ぎ足しで足りないものを足せた気もしたから面白かったし。デビュー作の「タオル」とか「タオル講座」なんかもあって楽しめると思うよ。とにかくね、買い時ってあると思うんだ。早く買っておいた方がいいと思う。何でって言いたくないけど(笑)。自分のカンがそう言ってるよ。ギャグの鮮度は無限じゃないよって。

─それは読者へのメッセージですか?
読者へのメッセージはもっと優しくしてあげようよ(笑)。買って損はないけど、買わなくて損する事はあるよっていう可能性の問題・・・絶対損するとまでは言わないけど(笑)。なんか、ネットでここまで辿ってきたあなたなら買いなさいって、そんな感じ(笑)。良い出会いになるんじゃないかなと。表紙も赤いし。単行本を手にしてファン同士がタオルを持って交流してくれればなと。しばき合いのオフ会を。

─ハチ公前でタオルを目印に。
タオルは使って欲しいですね。ボロボロになるまで使って欲しい。そんくらいの方が味が出てくるから。プレミアを考えてしまっておくのも良いかもしれないけど、使い込まれたタオルの方が、タオルとしての値打ちは上だね。拭った汗の数だけ価値は上がるよ。まあ3冊位買うといいかな。何故3冊かというとちゃんと理由があるんだよ。ここでは言わないけど(笑)。1冊でも大事にしてくれるからいいかもしれないけど、3冊だね。自分用に1冊は必要だし、大切な人がいればあげられるし、また誰かと出会えば渡せる訳だし。去り行く人へのプレゼントでもいいし、棺おけに入れるもよし。3てね、すごく宇宙的な数字だからさ。椅子の足も3本あれば、立ってるけど2本じゃ無理じゃない?

─上下巻2冊じゃなく、3巻出せよって言われそうですが
それはね、自分が完璧になっちゃダメなんだよね(笑)。不安定なままのフランスというものをね。まあ、これくらいにしといてやる。衝動買いして欲しいな。色んな人の色んな作品をマンガで読むことって偶然なこと多いと思うし。迷ってる人には「絶対、思ったより面白いよ」と言いたい。知らない作品を読むと言うのは、知らないCDを聴くように気合がいるけども。思ったより面白いよ。で、期待しちゃってる人はもっと期待しても平気だし、なんか買っちゃって欲しいな。

─もう少しだけ、これから「フランス」を読む読者へメッセージを
保証はしないけど全コマ楽しいと思うよ。当時の気合の入れ方からして1コマも無駄にするような老いぼれた心は無かったはずだから。若さ故の詰め込みだね。だから面白いとは思うけどね。1コマの中に入っている情報量が多すぎて、きっと疲れた人は疲れたんだと思うけど、成人している人は、ビールでも飲みながらゆっくりと。あとは2回、3回読んだ時に、最初1回読んだだけじゃ発見しなかったバックのくだらないものが、いっぱい目に入ってくると思うんで何回読んでも新しい発見はあると思います。描くのに時間がかかった分、くだらない小細工も増えていたはずだから。さらっとストーリーを繋ぐだけのつまらんコマはない。全部に何かが入っているはずだし、全部の表情に意味があるはずだから損はしないと思うな。下巻に関して書き下ろしはビビッてるけどね(笑)。

つづく



■フランス
週刊ヤングマガジンにて1995年から1996年の約1年の間不定期に連載された幻の名作。長年の月日を経て2002年5月9日遂に単行本化しそのベールを脱ぐ!



■タオル
「フランス」のプロローグとも言える作品であり、主人公は良平。第176回ヤングマガジン月間新人漫画賞入選作。デビュー作。



■風邪引き野郎
週刊ヤングマガジンの1995年 NO.13で読切りとして公開される。主人公と彼の家に居候する珍客「風邪」の心温まるストーリー。



■良平
フランスの主人公、8歳。小学校を中退してタオルに打ちこむワケアリ小学生。



■みかん
ピンチ団の一員。18歳の心優しいいじられキャラ。さらわれ上手。



■ピンチ
良平の父の弟子としてタオルを学ぶ。良平の世話をする兄的存在。ピンチ団と共に仕事もしないで毎日遊びまわっている20歳。



■良平が敵をバンバン倒して
闘い方も知らない良平がタオルを学び徐々に力をつける。切ない中にも格闘あり。実は格闘漫画!?



■東京カイシャイン
月刊コミックビームにて1999年から2001年まで連載。 ハチャメチャなようで正論?が繰り広げられる会社コメディ。世の中にはこんなにも「性」が溢れているんだね。全19話。単行本第1巻 絶賛発売中!!



■ピンチの頭はデカ過ぎる
回を重ねるごとにでかくなっていった頭は髪の毛のせい!?



■タオル講座
手拭いにも護身術用の武器にもなるというタオルの使い方を一挙公開!!



■タオルを持って交流
フランス購入時に付いてくる付録のタオルを持参しオフ会で集まり皆で盛り上がってみては。そこから何か始まる予感!?

タイム涼介本店 / トップページ / フランスインタビュー / フランスストーリー

time_ryosuke official web site copyright (C) 2001 time_ryosuke all right reserved